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【特別寄稿】津波・原発・風評、三重苦の福島から「被害者が加害者に・・・」

長谷川様特別寄稿です。
「福島っ子を救う会」の事務局長・長谷川雅好さんから、被災地現状のレポートを頂きました。 今後10年・30年・・・と続く悲痛な想いをご案内させて頂く次第です。

長谷川さんからのメッセージ

原発事故から8カ月が経過しました。恐れていたことが少しずつ現実化し、崩れて行く福島の光景を目の当たりにすると、あせりを隠せません。一目見ると、交通量があり人の活動もあるので、どこにでもあるような光景に見受けられますが、実情は、生活も社会も全てが一変しています。今や住民は、国政への不信のもと、信頼していた県行政にも裏切られ、よりどころを失っております。失態の全てが、崖っぷち現象といわれる死や重篤な後遺症に直結する具合です。危険な島から福のある島へ戻るのに、急いで荒海に跳び込ませることなく、確りした橋を築くことを望んでいるのですが。これ以上翻弄され続けると、さらなる悲劇を招いてしまうのではと危惧しております。福島の民は、「弱音をはかない」「他人へ迷惑を掛けたくない」という気性風土が強く、苦しみを最後まで口になかなか出しません。長年受け継いできた福島の民のこのようなDNAが、放射線で傷つき変異してしまう前に、復興行政を民のもとへ早く移して欲しいものです。既に、県境線が国境線のごとく太い線へ変貌してしまったのですから尚更です。その中でも私たち福島国民は、負の遺産となった福島国のために、日本国を犠牲にしたり、日本国民に迷惑を掛けることは望んでいません。福島国が荒野になってしまうかもしれませんが、生き様を後世に残し、DNAを絶やすことなく受け継いでゆこうという決意でおります。今まで、税制や雇用の面で原発の恩恵を享受してきたわけで、自業自得かもしれません。確かにそうであったとしても、様々な分野の多くの有志たちが、私財をなげうって自分たちでできる努力をしています。正念場はこれから迎えます。アドバイスを頂ければ、心強い限りです。

1.農業崩壊の危機
伊達市観光業、漁業、畜産業、林業が完全崩壊して久しいのだが、農業もいよいよ崩壊へ。福島米の安全宣言がなされた後、農家の自主検査を発端として、多くの暫定基準値超過米が発覚し続けている。玄米の県の事前調査では、公表する放射性物質検査データがND未検出ばかりであった。サンプリングの選定基準から不安を抱き、水田の空間線量からの簡易算定方法を公表しながら、安全性に疑問を投げかけてきたのだが、案の定の結果となった。経済的影響の少ないニッチ産品は切り捨てても、影響の大きいコア産品である米を守ろうとした、行政の結論ありきの体質がもたらした悲劇といえる。時期は前後するのだが、福島牛問題以降の農産品全てにおいて、主力需要地である首都圏に受入れ難い状況が続き、この度の米騒動を期に農業の崩壊は否めない。一連の農産物問題の根源は、農耕地を除染しないまま農家に作付させたことだ。作付規制品、強制避難地域では、明確な補償を示したのだが、その他の産品や地域で自主的に作付放棄した場合、農家への補償は一切ない。生産現物が後の検査で出荷規制になった場合にのみ、現物の対価補償にしてしまったのである。未除染耕地では、到底安心安全が補償されたものではないから、市場の原理で売れるはずもないことが解らないらしい。農業団体も分裂の危機に直面している。伊達市、福島市から高濃度産品が検出され続けるなか、他の安全な地区の農産物も福島産という表示だけで、販売不振に陥っている。特に、西部の会津は、茨城、栃木、千葉より線量の低いエリアであり、この地区だけでも何とか守ってあげたいものだ。

ボランティア 回収した落ち葉
県内外のボランティアによって落ち葉や枯れ草の収集 除染ボランティアによって集められた落ち葉の山


2.風評被害に喘ぐ産業
界震災後、復興支援の名のもとに、徐々にではあるが売り上げの回復基調にあったものの、7月以降頭打ちの状況となった。検査をすり抜けて、危険なものが流通してしまうなど、いつまでたっても安心安全が補償されないなか、福島のものにNOをつき付けるのは当然である。自主検査で問題がなくとも、製造地が福島というだけで販売不振に陥っている企業は多い。特に中小企業は、東北沿岸部の市場を喪失し、不安をあおる県外同業者の標的にさらされている。それらの産業に、直接的間接的に関わる業種も比例ダウンし、所得低迷のなか他業種にも波状している。ざっと見て、昨年対比売上は工業系で2割、食品加工業で4?5割ダウンであろう。近年の間に、既に体力を消失してきており、この先3年以内には地方銀行もろとも、奈落の底に落ちるのではなかろうか。さて、風評という言葉の意味を理解せずに、風評被害を連呼する者が多く困惑している。風評被害には、加害者と被害者が存在するわけで、連呼するほとんどの者すら加害者でもあったりしている。

3.復興特需の真相

焼却炉大手企業は、宮城県の自社系列工場が津波被害にあっており、代替え生産でフル稼働している。しかし、来年には宮城工場の再開が相次ぎ、今後は厳しい状況が迫られてくる。さて、インフラの再建がなかなか進まないのであるが、建設業界の恐慌により、ここ数年の間で半減してしまったためである。さらに、建設労働者の高齢化、新たな設備の投資控えなどから、入札者ゼロの物件も見受けられる。1兆円規模といわれる除染産業であるが、処理土、財源の問題から一向に進んでいない。派遣労働者数が全国一でありながら、県内雇用にもなかなか直結しない。また、除染したとしても、数年後には山間部から放射性物質が移行してくるなど、効果についての疑問視もある。

4.所得格差と子供の将来
県内では、「子供を救うネットワーク」があり、子供たちを県外へ避難させる手助けをしている。県外への流出人口は、公的発表で約6万人とされているが、住民票を移転しない未就学児と母親の自主的避難者は相当多い。未就学児を抱える世帯の二重生活の実態は把握されにくいのだが、保育園や幼稚園の経営者から悲痛の叫びが入っていることから窺うことができる。それは、退園者が続出したなか多くが閉鎖し、現在かろうじて継続している所も、来期の入園は全くめどが立っていない状況なのだ。人口流出に歯止めを掛けようと、福島県は新規県外避難者に対する補助を年内で打ち切る一方、他県へも受入れを拒否するよう要請した。問題なのは、子供を避難させている世帯の多くが、所得水準の高い層に偏っていることである。父親と祖父母だけが福島に住み続け、子供と母親が県外避難する二重生活だから当然なのだろうが。

5.子供たちが戻ってこれない環境
20?30km圏内の緊急時避難準備区域は、子供と妊婦のみが強制避難させられている区域である。しかし、世帯ごと避難するケースも多く、その区域も南相馬市のように徐々に解除されているが、子供たちは半数も戻ってこない。県内の大学、短大は、来期の入学希望者を対象としたオープンキャンパスの状況から、定員割れは避けられないだろう。加えて、今年の新生児出生数は、前年対比で3割が減少すると予想されている。では、新規採用についてだが、県内就職は壊滅状況にある。ここ数カ月で具体的な数値が判明してくるので、追って報告したい。自治体は、将来子供たちが戻ってこれる環境作りとして、除染一色になり視野が狭まっている。避難区域が解除された南相馬市のように、生活環境の除染が進んでも、多くの企業が廃業を余儀なくされており、戻るに戻れない状況である。経済基盤の維持も重要な要素である。今後、距離的に原発に近い地域は、70km離れた福島市や郡山市と比較しても低線量の地域が数多くあるため、避難区域が解除されてくる。そこでは、原発作業員の不可思議な死に様を見聞きしており、放射能に対して非常に敏感であることも考慮する必要がある。逆に、福島市や郡山市の都市部で鈍感すぎるのが恐ろしいくらいだ。

あずま運動公園 イルミネーション
福島市にあるあずま運動公園のイチョウ並木は今年も綺麗に紅葉していますが、食べられない銀杏・・・ 福島市のメインストリートにはイルミネーションが点灯したものの子供たちの姿はありません。 

6.違法流通と県民総内部被曝の危機
福島で生産された農作物の多くは、産地表示義務が及ばない加工品や外食産業に利用されている。それは、安全が確認されているものに限ったものでないから深刻だ。JAはグレーゾーンのものを自ら進んで検査をしない。意図的に、だんまりを貫く所が多い。また、無地の箱や袋で出荷される流通経路があり、どの産地に変わってしまったものか計り知れない。放射性物質の移行係数が低い、果菜、果実ならまだしも、最も危険と言われるきのこ、なかでも高額取引される松茸は大量に違法流通し、原発産業で私服を肥やしたお偉いさんの私腹に入り、体をむしばんだことであろう。とかく福島は、山間いの零細農家が多いため、流通制限された山菜、きのこ、干し柿、木の実ですら、40代以上で自家消費されているのが実態である。さらに、検査もされないグレーな農産物も当然の如くだ。さすがに子供や孫には食べさせていないが。食されているのは農家だけに留まらず、他県では売れないから物が余り、格安で若しくは無料で一般家庭にも渡っている。「もったいない、年だから気にもしないよ。どうせ発病する頃には寿命だから。」と言う反面、中国の商品は危険だの、乳酸菌は体に良いだの、通販で健康食品を購入するなどしている。

7.子育て世代以外の健康に対する関心の低迷
健康に対する関心の低迷について、前述したように危険な食品が自家消費されていることで明らかである。それ以外に、県は30年にわたる「県民健康管理調査」を開始したのだが、出発点である3月の生活調査票の回収が、15%にも達しないことでもうかがえる。既に記憶がなかったり、記入方法の複雑さが取りざたされているが、根底には、「子供や孫は何とかしてあげたいが、大人はどうなってもいいや。」という悲壮な思い入れが強いのと、低線量被曝の安全性を強調し続けていることも要因にあげられる。忘れてならないことは、「原発事故の真相、放射性物質の飛散・被曝の情報、本来の使用目的が、未だに告知されていない。」「調査を主導する学者たちが、安全を豪語する刺客」であることが、県行政への不信感に拍車を掛けている。低年齢層を持つ子育て世代の関心は非常に高いものの、チェルノブイリでも問題になったチェルノブイリエイズのように、これから婚姻出産を控える10代後半から20代での関心も低い。低体重児や免疫力低下児の出産増加が、懸念材料にある。 私たちの団体は、「数年後に、一人でも原発由来の健康被害者が出てしまったら、福島の故郷は壊滅し、人身差別にも及ぶ」と訴えながら、食育や内部被曝防止を中心に予防活動をしている。しかし、多くの住民は、今を生きることで精一杯である。

研究所より

長谷川さんご寄稿ありがとうございました。福島・被災地を風化させないためにも折々ご案内を頂ければと思います。今回の災害は、天災に人災が絡み、事態を一層深刻化させています。レポート文中にもあった「被害者が加害者に・・・」という言葉が象徴的です。全て初めての体験であり、これという解決策が見い出せない事も事実です。然し我々は前を向いて進んでいかなければいけません。大事なことは、決して風化させることなく、都度こうした情報発信をしていくことにあると考えます。長谷川さんありがとうございました。
かけがえのない地球、日本そして我々のふるさとを護っていきましょう。


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